成長期の骨盤では骨端線が残っているため、筋肉の急激な収縮による牽引力によって力学的に弱い骨端線部に裂離骨折を起こします。骨盤には下肢の筋の起始部があり、上前腸骨棘・下前腸骨棘・坐骨結節がスポーツによる裂離骨折の3大好発部位です。
上前腸骨棘骨折は、骨盤裂離骨折の中でも最も頻度が高く、縫工筋ならびに大腿筋膜張筋の牽引力で生じます。14〜16歳に多く発生し、その大半は短距離の全力疾走中、ついでスタートダッシュ時などにみられます。
次に、大腿直筋の起始部である下前腸骨棘裂離骨折も多いです。14〜15歳に多発し、サッカー選手がボールを蹴ったときや跳躍の着地時に発生することが多いです。サッカーにおいては、最も発生頻度が高いとされています。
坐骨結節裂離骨折は、大きなストライドでの疾走中の加速、ハードルや体操競技などで大きく開脚した際など、ハムストリングスに強い収縮力が生じたときに発生します。
成長期を終えた骨端線閉鎖後のアスリートでは、骨盤の裂離骨折の発生頻度は低くなる代わりに、同様の発生機序で大腿四頭筋やハムストリングスの筋損傷(肉ばなれ)が起こると考えられています。