肩関節前方脱臼に付随する可能性がある合併症の一つです。肩が前方に脱臼した際に上腕骨頭が肩甲骨の関節窩の前縁に強く衝突してしまうことがあります。この衝撃により、上腕骨頭の後ろ側にあたる部分が凹んだり亀裂が生じてしまうことをヒルサックス損傷(Hill-Sachs lesion)と呼びます。
脱臼を元の位置に整復されたのちでも、上記のような骨の損傷があれば、損傷の傷が溝のようになって、脱臼が再び起こる可能性を残してしまいます。それが原因で再脱臼するたびにヒルサックス損傷が悪化してしまうこともあるため、肩関節が後ろ方向へ開くような肢位には特に注意が必要です。少しでも再発を防ぐためには再脱臼の姿位をとらせないための日常生活動作の指導と安定性を高めるための筋力強化がとても重要となります。
当院では、このような傷病に対して痛みをとるだけではなく、筋機能を改善するためのトレーニングも並行して行い、根本的な改善を図っていきます。