肘の内側側副靱帯損傷には、捻挫や脱臼などの急性外傷により生じるものと、投球動作やラケットスポーツなどでの繰り返される慢性的な外反ストレスの結果生じるものがあります。
内側側副靱帯は、上腕骨内側上顆と尺骨を連結し、前斜走線維(AOL)、後斜走線維(POL)、横走線維に分けられ、肘内側部の安定性に貢献しています。肘関節20〜120°の範囲における外反ストレスに対しては、特にAOLが主要な静的安定機構となります。
野球(特に投手)、テニス、アメリカンフットボール(特にクォーターバック)、やり投げなど、肘に外反ストレスが繰り返しかかるスポーツでは、損傷のリスクが高まります。特に野球の投手では、連続して投げる動作が多いため、多くの事例が報告されています。
投球動作では、腕は鞭のようにしなり、その反発でボールを投げることができます。この際、肘の内側側副靱帯には非常に大きな外反ストレスがかかっています。そのため投球動作の繰り返しによる靱帯の微細損傷が起こり、一度の投球をきっかけに激痛とともに発症することも多いです。