腓骨筋腱脱臼は先天性脱臼と後天性(外傷性)脱臼があり、ねんざとの鑑別が重要となるのは外傷に伴う後天性脱臼になります。外傷性腓骨筋腱脱臼の頻度は決して高くはありませんが、外傷性腱脱臼のなかでは最も多いです。スポーツ外傷によって発症することが多いため、日常診療において足関節内反ねんざに伴う外側靭帯損傷と見誤られることがしばしば認められます。
腓骨筋には長腓骨筋と短腓骨筋の2つがあり、短腓骨筋腱が腓骨側で凹状のくぼみにはまり込んでいるのに対し長腓骨筋腱はその背側(表層)を通るため、長腓骨筋腱が脱臼する場合が多いです。
腓骨筋腱の典型的な受傷パターンは足関節背屈位かつ外がえしの肢位で、強く腓骨筋が収縮した際に発生しやすいとされています。これは足関節内反捻挫が底屈かつ内がえしの肢位で受傷するのと異なるため、受傷肢位の聞き取りは鑑別の際にとても重要となります。
受傷から2週間以内の新鮮例に関しては、整復後に周囲の組織を緊張した状態で保持するため、なるべく受傷してから早い段階で固定の処置を行います。脱臼してから時間がたってしまうと、周囲の組織の緊張が失われてしまったまま治ってしまうので、保存療法の場合では松葉杖による免荷歩行と約6週間にわたるギプス固定が必要であると考えています。