スポーツや交通事故などによる打撲、骨折、脱臼などをきっかけに、それによる出血などで下腿の組織内圧が上昇して、筋肉内細動脈の血行障害を引き起こし、筋腱神経組織が壊死に陥る障害です。
組織が壊死に陥ると機能障害は永久的となり、四肢の切断を招く可能性があるため、初期の迅速な判断が重要です。全身では特に下腿に好発します。下腿は筋膜などで4つの小さい区域に区画(コンパートメント)されているため、内圧が上昇しやすいと考えられます。
下腿コンパートメントの解剖
下腿のコンパートメントは強い筋膜によって、4区画①前区画、②外側区画、③浅表在区画、④後深在区画に分けられています。①前区画には前脛骨筋、長母趾伸筋、長趾伸筋が存在し、②外側区画は長・短腓骨筋、③浅表在区画は腓腹筋、ヒラメ筋、足底筋、④後深在区画は後脛骨筋、長母趾屈筋、長趾屈筋から成り立っています。
一般的に、コンパートメント症候群および虚血の期間が長いほど、転帰は悪くなります。1 時間の組織虚血は可逆的な神経麻痺と関連しますが、4 時間の虚血は不可逆的な軸索断裂を引き起こす可能性があり、5~ 6 時間の虚血は不可逆的な壊死と関連し、機能障害を引き起こす可能性が高くなります。
コンパートメント症候群が疑われる場合、または患肢に痛みがある場合は、コンパートメント圧の検査を行ってください。診断には、コンパートメント圧の絶対値が 30 mm Hg を超えていることと、圧力差が 30 mm Hg 未満であることの両方で判断します。筋膜切開術はコンパートメント症候群の唯一の治療法として認められており、診断後すぐに行う必要がありますので、本症状が疑われる場合は早めの受診を推奨致します。