足根管症候群は脛骨神経が脛骨内果・距骨後突起・踵骨内側および、内果より踵骨内側につく屈筋支帯で囲まれた骨繊維性トンネル内での絞扼性神経障害です。足根管内には脛骨神経の他にも後脛骨動静脈が走行しており、 脛骨神経の93%は足根管内で内側足底神経および外側足底神経に分枝しています。
絞扼を受ける部位は足根管内、内側踵骨枝が屈筋支帯を貫通する部分、足底神経が母趾外転筋下へ入る部分が多いとされており、腱膜、腱様組織による直接の圧迫やガングリオンが関与したもの、手術の瘢痕によるものや足関節の変形によって絞扼されてしまうと考えられます。絞扼が起こると、足関節内側から足底、足趾のしびれ感、痛みや灼熱感、知覚低下、脱力感などが発生します。特にガングリオンが神経内に発生した〈神経ガングリオン〉の場合は強い疼痛を覚えることが特徴として挙げられます。足底の温痛覚低下を認めることもありますが、踵の症状は乏しいとされています。
また、足根管症候群と似た症状を呈する他の疾患として腰椎椎間板ヘルニア(S1神経根症)、腰部脊柱管狭窄症などの脊椎由来の神経疾患があります。足根管症候群でも稀に症状が下腿にまで及ぶこともあるため見分けることが難しいケースも存在しますが、通常は痛み、痺れ、灼熱感が足底・足趾に限局されているので診断しやすいケースも多く存在します。
症状が慢性化すると筋の萎縮をきたし、足全体の筋力低下が起こる可能性が高まりますので、本症状に覚えのある方は早めの受診をお勧めします。