後十字靭帯(PCL)は大腿骨に対して脛骨後方移動を抑制し、膝関節後方安定性を担う重要な靭帯です。大腿骨顆間窩内側壁から脛骨後顆間中央の窪んだ部分に付着しており、前十字靭帯(ACL)と交叉して走行しています。
PCLはACLとともに表面が豊富な血行を有する滑膜で覆われており、その滑膜より微細な毛細血管が靭帯内へと走行しています。それに加え、膝窩動脈から分岐した多くの血管が血流供給を行うため、PCL損傷はACL損傷と比較しても血行が豊富であることからACL損傷よりも治癒が期待できます。MRI検査でPCLの連続性が保たれている場合は保存療法の適応となることが多いと考えられております。
受傷早期は膝窩部の疼痛や関節腫脹がみられます。PCL単独損傷の場合には自覚症状が認められないこともあり、後方不安定性が残存した場合、坂道や階段昇降時の膝不安定感などが生じます。その他の症状として膝崩れ、屈曲位から伸展する際の後方落ち込み、不安定感が認められます。